福岡の消防設備業、寿防災工業の安永です。自家発電設備の点検については2018年6月に法改正があったのですが、これに伴い消防庁が注意喚起している「不適切な営業活動」についてご紹介させていただきます。ビルやマンションの管理をされている方は、悪質な営業に遭って不利益を被らないようにご注意ください。

注意!「自家発電設備の点検」の嘘

最近、一部の民間事業者のホームページやチラシリーフレット、あるいは営業活動において、次のような自家発電設備に関する嘘が横行しているようで、消防庁が注意喚起をしています。詳しく知りたい方は消防庁の公式サイトでご確認いただければと思いますが、ここではよくある悪質営業の嘘を5つ、簡単に紹介させていただきます。

悪質営業の嘘1:高額な点検用キット

「◯◯が主催する講習を受けて、点検用のキット(数十万円)を購入すれば、無資格でも自家発電設備の点検をすることができます。1回の点検で数十万円を稼ぐことができますので、すぐに元が取れますよ。」

これは明らかな嘘です。消防法令上、自家発電設備の設置が義務付けられる規模の建物においては、消防設備士(or 消防設備点検資格者)による点検が必要です。無資格での点検は違法となりますので、騙されて高額な”点検用のキット”など買わないように気をつけてください。

悪質営業の嘘2:消防署から依頼を受けてます

「消防署から依頼を受けて、自家発電設備の負荷運転を実施しています。」

これも嘘です。消防庁や消防本部が、特定の団体や民間企業に負荷運転の実施を依頼することはありません。私たちのような防災設備を専門とする会社は、建物の関係者(所有者・管理者・占有者)からの依頼を受けてはじめて点検・改修工事などを行い、その結果を消防署などに書類で報告します。消防署の方が、業者選びで迷っている方に弊社をご紹介(提案)いただくことはあっても、直接依頼を受けることはありません。

悪質営業の嘘3:負荷運転を実施しないと罰金1億円

「自家発電設備の負荷運転を実施していない建物オーナーには、消防法第44条または第45条に基づき1億円の罰金に処せられます。」

嘘です、煽りですね。「自家発電設備の負荷運転のみが実施されていない」という理由だけで即座に罰則が適用されることは通常ありませんし、1億円というのは消防法第45条に定められた一部の罰金刑の上限額に過ぎません(多くは30万円以下など)。だからといって「自家発電設備の点検をしなくていい」という話ではありません。消防法第17条の3の3で、定期的な点検が義務付けられていますので、実施しないと行政指導の対象になります。それ以前に、安心安全な生活空間を維持するために、有資格者による点検は必ず実施するようにしてください。

悪質営業の嘘4:東日本大震災ではコレが原因でした

「東日本大震災では自家発電設備の多くが作動せず、その原因が負荷運転の未実施でした。ですから、一刻も早く負荷運転を実施すべきです。」

これも嘘で、話を盛っています。一般社団法人 日本内燃力発電設備協会の調査では、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震において、負荷運転の未実施のみが原因で自家発電設備が作動しなかった(停止した)事例はありません。ただし、バッテリー放電や燃料フィルターの目詰まりなど”メンテナンス不良”により不作動・停止した事例は一定数あります。ですから、大規模地震等に備えて、点検基準に従って定期的に点検を実施し、不備がある場合には速やかに改修・交換等を行ってください。

悪質営業の嘘5:負荷運転をしないと公開されますよ

「負荷運転を実施していない建物は、消防本部のホームページで公開されてしまいますよ。」

これは、正確に言えば嘘です。違反対象物の公表制度は確かにあります。しかし、それらは各消防本部が条例を定めており「スプリンクラー設備、屋内消火栓設備、自動火災報知設備が全く設置されていない」といった、消防法令の中でも極めて重大な違反がある建物を公開している制度です。負荷運転を行っていないことが理由で公開する消防本部は、少なくとも消防庁では把握していないとのことです。それに2018年6月の法改正以降は、負荷運転ではなく「内部観察」による点検も認められるようになりました。

悪質営業に遭ったら消防庁にご連絡を

私たちも民間事業者の立場なので、こうした嘘による営業は本当になくなってほしいと思います。国家資格である「消防設備士」をはじめ、各種資格やそれに基づく仕事というのは法令の上に成り立っており、そこに嘘があってはいけません。消防庁からの通達があるように、このような不適切な情報発信をしている事業者を発見した場合は、消防庁予防課(TEL:03-5253-7523)まで連絡してみてください。

以上、自家発電設備の負荷運転において、消防庁が注意喚起している悪質営業の嘘を5つ取り上げてみました。嘘はいけませんが、自家発電設備の点検は必ず行っていただきますようお願いいたします。建物・設備を管理する立場の方は、消防法や建築基準法など、法改正の情報は早めに取得して対応をお願いしたいですし、仕事が忙しくて難しいのであれば私たちがサポートさせていただければと思います。法改正への対応など、お困りのことがありましたらぜひお気軽に相談してくださいね。