火災というのは、時間とともに徐々に燃え広がるイメージがあるかもしれませんが、実際は少し違います。最初は徐々に火が燃え広がるのですが、ある時を境にして急激に炎が拡大します。このように、室内などの局所的な火災において、急激に炎が室内全体に燃え広がる現象のことを「フラッシュオーバー」といいます。

これが起こる原因は、可燃性ガスが部屋の上部に溜まり、それが一気に引火して爆発することだと言われています。フラッシュオーバーになると室内の温度が800〜1000℃まで急上昇するうえに、有毒ガスなども発生し、非常に危険な状態になります。この恐ろしい現象が発生するまでにかかる時間は、火災発生後からわずか5〜15分です。場合によっては、数秒から数十秒で起こることもあります。

「フラッシュオーバー」が起こるまで

火災発生当初は、火は可燃物に燃え移りながら少しずつ広がっていきます。しかし、たとえば火が縦に広がりやすいカーテンなどがあると、火の勢いは急速に増します。それによって室温が上がり、空気が天井付近に熱気として滞留すると、天井材などの内装物が熱で溶かされ、可燃性のガスが発生することがあります。

このガスが、火災で発生した熱の滞留・放射・伝導によって引火すると、先の「フラッシュオーバー」という恐ろしい現象が起きます。繰り返しますが、ここまで火災発生からわずか15分程度です。実際にフラッシュオーバーが起こると、窓ガラスが割れるなどして新しい空気が入ってくるため、さらに火の勢いは拡大していきます。こうなると、消火にはかなりの時間を要することになります。

「初期消火」に必要な消防設備

実際、フラッシュオーバーが起こると、出火した部屋には容易に近づけなくなり、延焼を防ぐことが優先になります。ですから、被害の拡大を防止するためには、いかにして「初期消火」を行うかが重要になります。できるだけ早期に発見する、火災が拡大しない環境を整備する…といった対策をしなければいけません。

消防法によって、建物にスプリンクラー設備(火災を感知して自動的に散水・消火を行う)や自動火災報知設備の設置が義務付けられているのはそのためです。これらの設備が正常に可動することで、火災による被害を最低限に抑えることができます。有事に備えて、定期的に消防訓練を行うことも必要ですね。

スプリンクラー設備の設置が義務付けられているかどうかは、建物の用途や延べ面積、階数などによって変わってきます。詳しく知りたい方はお問合せフォームからお気軽にご相談くださいね。