35人の命が奪われた京都での放火事件以降、「ガソリン購入を規制すべきではないか」という議論が各地でなされているようです。実際、ガソリンによる放火事件は、過去にも発生しています。2001年には青森県の消費者金融サービス支店でガソリンによる放火殺人事件が起きており、5人の尊い命が奪われていますし、2009年7月には大阪市のパチンコ店で入口付近に撒かれたガソリンに放火され4人が死亡、19人がケガをするという事故も起きています。

残念ながら、ガソリンによる爆発的な燃え方は、現在の消火設備(スプリンクラー設備や屋内消火栓)で対応できる規模・スピードを超えています。ですから、そもそもガソリンの取扱い自体に議論が及ぶのは自然なことかもしれません。放火という許せない犯罪が世の中からなくなるのが1番いいのでしょうけど、現実にこうした事故が起きている以上は何かしら対策をしなければいけないでしょう。

また屋外でも、2013年には福知山市の花火大会の会場で屋台の店が燃え上がり、楽しいはずの場所で3人が死亡、50人以上が怪我をするという痛ましい事故が起きました。このときも、火災の原因は発電機の燃料用ガソリンの不適切な取扱いではないかといわれています。この事故を契機に、携行缶に入ったガソリンを使用する場所では消火器の準備が義務付けられました。

あまり知られていないガソリンの危険性

このようにガソリンは大変危険なものです。これには理由があって、ガソリンは揮発性が高く、気温が低くてもどんどん気体になります。その気体も無色の気体ですから目に見えません。ですから、一見ガソリンから離れた場所にいるようであっても、そこで日を使うと、目に見えない気体に火が付き、爆発的に燃え上がることがあります。しかも、この気体は空気より重いため、なかなか拡散しません。火の付きやすい危険な状態が長く続きます。

ガソリンは自動車の燃料として身近な存在なので、その危険性が十分に認識されていないことも原因かもしれません。実際、過去に嘘みたいな事件が起こっています。ある少年が運転していたバイクが、暗い夜道でエンストしてしまいました。その少年は燃料が残っているかどうかを確認しようとして、燃料タンクのキャップを開け、ライトの代わりにライターの火を近づけたのです。すると、途端に給油口から炎が吹き上がり、少年は頭に大火傷を負ってしまいました。これ、本当にあった話です。

「ガソリン vs 灯油」、どっちが危険?

もう1つ、私たちにとって身近な液体燃料としては「灯油」がありますよね。灯油ストーブは電気ストーブよりも暖かく感じるので、今でも冬に使っているご家庭も多いでしょう。この灯油とガソリンを比較すると、実は危険性には雲泥の差があります。どのくらい違うのかというと、火の点いたマッチ棒を落としてみると分かります。どうなると思いますか?

ポリバケツに入れた灯油に火の点いたマッチ棒を落とすと、マッチ棒は「ジュッ」と音を立てて火は消えてしまいます。しかし、ガソリンで同じことをしたら大変です。先の話にもあるように、アッという間に大きな炎となって爆発的に燃え上がります。こんな実験、絶対にマネしないでくださいね。

誤ってガソリンをこぼしてしまったら消火器を放射しましょう

もし、ガソリンを大量にこぼしたり、悪意で撒かれたりしてしまったらどうすればいいでしょうか? その場合は、火が点いていなくても、消火器で薬剤を放射してください。燃えにくくする効果があります。水をかけても効果はありません。ガソリンは水より軽く、水とは混じり合わないために、水の表面に浮いて広がるだけです。消火手段がなければ、素早く遠くへ避難しましょう。繰り返しますが、ガソリンは思っている以上に危険です。

2019年10月1日施行:全ての飲食店に消火器を!

なお、消火器に関してですが…来月2019年10月1日から消防法が改正され、小規模飲食店等の消火器具設置基準が見直されます。これまでの消防法では、延べ面積150㎡以上の飲食店等に対して消火器の設置が義務付けられていましたが、今回の改正により「飲食物を提供するために、飲食物の調理を目的として設けられた器具や設備」がある場所では、延べ面積に関係なく消火器の設置が義務付けられることになりました。まだ準備ができていない防火管理者の方は、お早めに消火器の手配をお願いいたしますね。