きっとあなたも街を歩いていれば「安全第一」の看板をよく目にするでしょう。事故を防ぐために、建設業はもちろん私たち個人としても安全は最も大切です。それはわかっているものの、常に意識するのは思いのほか難しいもの。というのも、あまりにも日常的な目標であり、ともするとマンネリ思考に陥りやすい…それが安全というものです。

クリエイティブに安全に取組む4か条

ただ、以前JR九州会長の唐池恒二さん講演に行った時にこの「安全」について改めて考えさせられました。それで、興味を持って著書『感動経営』を読んだら、より分かりやすく、それでいて唸る内容が4つのポイントに分けて書いてあったので少しシェアさせていただこうと思います。安全に対して最大の力を注がなければならない鉄道会社トップの考え、ぜひご一読ください。

第1条:安全意識は眠りやすい

安全への意識は、ちょっとした油断や単調な仕事に慣れた時に薄れてしまうものです。そのことを唐池会長は「眠りやすい」と表現しています。どんなに優秀な社員も、無事故を継続しているベテラン社員でも、入社間もない緊張感を漂わせる若手社員でも、安全への意識は等しく”眠りやすい”のです。「そんなのプロとして恥ずかしい」というのは尤もですが、眠りやすいものは眠りやすいわけです。

では、プロならどうすべきか? それは、最初から「安全意識は眠りやすいものだ」と覚悟することだと。眠りやすいと割り切るからこそ、逆にその眠りから常に目覚めるような対策をするようになります。眠りから人を起こす時、相手の体を揺すったり大きな声で読んだりしますよね。安全意識に対してもそうです。眠らないように自分の体を動かし、自分で自分の安全意識に対して声を出すのです。

そのためのとっておきは「指差し確認」です。指差呼称と呼ばれたりもしますが、指先までしっかりと伸ばし、大きな声で指差し確認をすることで、眠りやすい安全意識を覚醒させることができます。なおJR九州では行動訓練によって指差し確認をはじめとする基本動作の徹底を図っているそうです。

第2条:あとひと手間、もうひと確認

これはどの仕事にも通じる言葉です。仕事を仕上げるために、あとひと手間を加えるだけで仕事の出来栄えが違ってきます。そのひと手間に、手掛けるその人の最後の思いがグッと入り込みます。1つの仕事や作業の最終段階でどうしても気になるところだけ再度チェックします。

最後のもうひと確認で重大なミスを発見し、事なきを得ることは少なくありません。仕事ができる人は、最後のひと手間を欠かしません。最後のもうひと確認が必ずなされています。「あとひと手間、もうひと確認」が安全をつくるうえで非常に大切な意識だと。

第3条:倦まず弛まず

安全にかかわる仕事は、ともすれば単調になりがちです。単調なあまり飽きてしまったり、緊張感をなくしてしまったりします。そうならないように戒めの念仏として「倦まず弛まず(うまずたゆまず)」と唱えましょう。

第4条:安全はつくるもの

よく「安全を守る」といった表現が使われますが、実はこれは正しくないのです。なぜなら「安全はその現場にもともと存在している」「何もしなくてもそこに安全がある」「それをなくさないように”守る”」といった思い込みから導かれる言葉だからです。

重要なことですが、安全は決して”誰かがあらかじめ用意してくれるもの”ではありません。以前からそこにあるものでもありません。現場には本来、危険が溢れているもので、守るべき安全が存在する余地などありません。常にどんな危険が飛び込んでくるかわからないのが現場です。

つまり、安全は守るものではありません。その瞬間、瞬間に基本動作を繰り返し、安全意識を呼び覚ましながら”自らつくり育むもの”です。この考えこそが、安全な現場であり、安全な生活空間を築いていくのだと思います。

安全は赤ちゃんと同じ

さて、いかがでしょうか?安全を守るという意識から、安全をつくり出す意識に変わること。これは大きな変化でしょう。僕らの防災設備の現場でもそうですが、他の仕事にかかりっきりになると安全のことを意識しなくなります。ともすれば安全をほったらかしにしてしまうのです。そんな時にイメージとして持ちたいのは「安全は赤ちゃんと同じ」というもの。

赤ちゃんにかまってあげず、放ったらかしにすると…赤ちゃんは自分に注目してもらおうとグズったり、駄々をこねたり、泣き喚いたりしますよね。安全も同じです。安全のことを放ったらかしにすると、安全も駄々をこねるのです。安全が駄々をこねるとどうなるか…お察しの通り事故が発生します。

私たちもまた「安全第一」の言葉を掲げるだけでマンネリ化しないよう、先の4ヶ条を心に留めて現場でのメンテナンス・工事にあたることが大切だと考えています。

―寿防災工業 安永周平―