先週の話ですが、ある不動産会社の方から電話がかかってきました。以前、仕事のパートナーからこの会社の社長をご紹介いただき、その福岡支店の支店長から「ちょっと消防設備のことで相談したい」とのこと。何でも先週末、管理をしている福岡のマンションの消防設備(自動火災報知設備)で警報が鳴っていたのですが…どうやら火災は起きていなかったとのこと。つまりは誤報ですね。結果は火災じゃなくてひと安心だったのですが、警報が鳴って入居者の方も出てきて騒然として、消防にも連絡をして現地に来てもらったり…と色々と大変だったそうです。
「実は以前も誤報が出たことがあって…」
話を聴いていると、実は以前にも同じ誤報の不具合が出ていたことがわかりました。それからしばらくは出なかったけれど、先週末にまた誤報が出たと。それで、原因が分からずに一時的に設備を停止しているので、どのように対応すればいいか教えてほしいというわけです。つまり現在は「未警戒」の状態で、本当に火災が起きたとしても警報がならない状況です。消防白書によれば、火災による死因の半数は毎年「逃げ遅れ」だと言われていますから、マンションの警報がならない状態は危険ですね。
現地調査でわかった受信機の問題。そして…
ですから翌日、現地の設備を不具合と原因を調べるため、技術担当の社員と一緒に現地調査にうかがいました。現地で導通試験や配線の繋ぎ変えなど色々と調査をした結果、原因が分かりました。自動火災報知設備には「受信機」という心臓部があって、その電子基板の部品が劣化しているため、火災でもないのに発報していたんです(誤報)
通常なら、部品の交換によって修理ができます。しかし、今回のケースでは無理でした。というのも、日本火災報知機工業会によれば、自動火災報知設備の受信機は15年が更新時期の目安だと言われています。24時間365日電源が入っている設備なので、電子機器はどうしても劣化する…その寿命の目安が15年なんですね。そして、現地調査で分かった受信機の経過年数は31年。更新時期の目安を大きく過ぎています。
なお、防災設備メーカーも設備の生産終了から10年間は部品を生産してくれますが、それ以降になると部品の調達も難しくなります(今回のケースも部品の生産は終了していました) 仮に部品が調達できたとしても、寿命の2倍以上が経過している現状で悪い箇所だけ直しても…しばらくすれば別の箇所に不具合が出るでしょう。
自動火災報知設備は15年ごとにリニューアルを
ですから、この機会に自動火災報知設備の受信機を含め全面リニューアルを提案しました。もちろん、リニューアルはそれなりの金額がかかります。しかし、悪いところだけを直すような”対症療法的”な処置を続けるのはオススメできないんです。ツギハギの工事を繰り返してたら、結局は工事の回数が増えてトータルの工事金額は上がってしまいます。マンションで部屋内の工事が必要であれば入居者の方々との日程・時間調整も大変になるでしょう。
目先のコストを削ることを優先した結果、結局は面倒ごとが増えて労力的にも金銭的にも高くついてしまいます。何より建物の安全が確保できません。今回のご相談は分譲マンションでしたから、マンション管理組合様の修繕計画にも防災設備のメンテナンス・リニューアル費用を盛り込んでいただく方が、長期的にメリットがあることも合わせてお伝えさせていただきました。
目先のコスト削減 < 建物の長期修繕計画
防災設備は、ある意味で保険と同じような「予防商品」ですから、お客様が目先のコストを気にしてしまうのは当然です。でも、だからこそ長期的な視点で価値を伝え、お客様のためになる判断をしてもらうこと。そのために必要な情報を提供をするのが私たち防災設備会社の役割ではないかと思っています。お客様の立場を理解し、そのうえでお客様だけでは気付くことができないベストな提案をする。そんな仕事を目指していきたいと思います。
―寿防災工業 安永―
追伸:
マンションに限らず築15年を過ぎている建物で、自動火災報知設備が1度も更新されていないケースは多いです。ぜひ1度確認してみてください。どこをどう確認すればいいかわからなければ、下記よりご連絡いただければ現地調査にうかがいます。