※12/17(金)に起きた大阪北区のビル火災で亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。
大変痛ましい火災による死亡事故が起きてしまいましたが、二度とこのような事故が起こらないためにも、私たち消防設備士にできることを少しでも考えて行動に移していきますのでどうぞよろしくお願いいたします。そして、早速ではありますが12/19(日)に総務省消防庁からタイトルのとおりこの火災を受けて通達が出されましたのでご案内いたします。今回の建物と同様の物件をお持ちであれば、消防による立入検査が実施されます。建物オーナー様、管理会社様にいたってはぜひとも内容を確認しておいてください。
「特定一階段等防火対象物」は全国一斉に緊急立入検査
簡単に申し上げますと、今回の火災による死亡事故が起きた建物と同じ種類の建物について、全国一斉に緊急の立入検査を行うというものです。事故があった雑居ビルは消防法上「特定一階段等防火対象物」と呼ばれており、簡単に言うと3階以上に特定用途(飲食店や病院など不特定多数の人が出入りする)のテナントがあって、なおかつ避難上有効な階段が1つしかない建物のことを言います。
こうした建物は3階以上にいる人にとって唯一の避難経路である階段に火の手が回ってしまったら、逃げることができなくなってしまい非常に危険です。今回の大阪市北区のビル火災もそうでしたし、2001年に起こって44名もの方が亡くなった新宿歌舞伎町の雑居ビル火災もまたこの「特定一階段等防火対象物」でした。それだけ危険性の高い建物だと言えます。
避難はしご、救助袋、緩降機など避難設備で「二方向避難」
本来、建物は建築基準法により「二方向避難」ができるように逃げるための階段が2つ以上あるのが望ましいのですが、このように避難上有効な階段が1つしか階段ないケースもあります。その場合は、避難はしごや救助袋、緩降機などの「避難設備」を設置することで2つ目の避難経路を確保しなければいけません。ただし、年2回の消防設備点検でしっかりと設備のメンテナンスを行っていることはもちろん、日頃から消防訓練を実施してこれら設備の使い方に慣れておく必要があります。
また、階段の踊り場などに荷物が置いてあって避難に支障をきたしたり、火災発生時に閉まるべき防火扉の前に荷物が置いてあって防火扉が閉まらず、建物に煙が充満して一酸化炭素中毒が起こる…といった問題もあります。だからこそ今回、総務省消防庁は全国の「特定一階段等防火対象物」に緊急立入検査に入って危険がないか調べるよう、全国の消防署に通達を出したのです。立入検査でチェックが入るのは、先の通り「特定一階段等防火対象物」に該当する建物になります。このあたり、よくわからないままの状態になっているのであれば、これを機にぜひお近くの消防署にお問い合わせいただくか、弊社のような防災設備専門の会社にご相談ください。
今回の緊急の立入検査対象となる建物と検査内容(総務省消防庁HPより)
1 緊急点検(立入検査)対象とする防火対象物
消防法施行令(昭和36 年政令第37 号)第4条の2の2第2号に該当する防火対象物(特定一階段等防火対象物)
2 緊急点検(立入検査)の留意事項
防火管理の実施状況や消防用設備等の設置状況に係る消防法令違反がある場合は、重点的に改善指導を図ること。特に、避難経路となる階段等の施設に避難の支障となる物件が置かれている場合や、火戸の閉鎖の支障となる物件が置かれている場合は、火災発生時に被害が拡大することが予想されることから、消防法第5条の3の規定に基づく命令を行うことなどにより、直ちに物件の除去を行わせること。
今回の立入検査で注意すべき3つのこと
とのことですので、3階以上に不特定多数の人が出入りするテナントがあり、階段が1つしかない建物のオーナー様(管理者)は最低でも…
・避難設備の設置及び消防設備点検(年2回)の実施
・階段の踊り場など避難経路に障害物を置かない
・防火扉や防火シャッター付近に物を置かない
の3つはすぐにでも確認しておきましょう。今回のように放火という悪質な原因による火災の場合は、全てを防げるわけではありませんが…日頃から予防をしておくことで防げる事故もあります。私たちの努力で救える命もありますので、ぜひ今一度、建物の状況を確認のうえで適切な対処をするようにお願い申し上げます。ご不明な点は私たちのような防災設備会社がサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
―寿防災工業 安永周平―